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山小屋支援プロジェクトについて

YAMAP代表の春山慶彦です。
先日、YAMAPでは山小屋を支援するクラウドファンディングをスタートしました。

現時点ですでに非常に多くの方からご支援をいただいております。心より感謝申し上げます。

このnoteでは、そもそもなぜ山小屋支援のクラウドファンディングを始めたのかなどについて、共有できればと思います。


なぜ山小屋支援が必要なのか

山小屋は、休憩・宿泊施設としての役割だけでなく、遭難救助の役割や、登山道を維持・整備する役割も担っています。山小屋は“山のインフラ”として極めて重要です。

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現在、コロナ禍で多くの山小屋が休業、もしくは限定的な営業を余儀なくされています。中には、売り上げが激減するなど存続が危ぶまれている山小屋もあります。

山小屋は、日本の登山文化そのものです。山岳地域にこれほど多くの山小屋が存在する場所は、世界的に見ても稀有ではないかと思います。

私は山小屋が好きです。山小屋の中では、年齢や肩書き、職種に関係なく、「その人そのもの」として、みな自然体で存在している。山小屋の食堂でたまたま隣同士になり、打ち解け合って縁が生まれた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、暴風雨の中、何とか山小屋にたどり着き、雨風をしのぎ、暖をとれることの有り難さに、心から感謝した方も数多くいらっしゃると思います。そうやって人の縁を育み、人の命を守りながら、何年、何十年と山小屋は存在し続けてきました。

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登山と自然を愛する人たちで、山小屋を支援する機会をつくりたい。その思いを込め、本プロジェクトをスタートしました。


クラウドファンディング形式にした理由

山小屋を支援するプロジェクトを立ち上げようと思ったのは、4月末になります。当初は、山小屋の宿泊予約券を事前購入するシステム開発を検討しました。ですが、開発に1ヶ月以上の時間がかかることや、宿泊予約券は「未来の売上の前借り」になるため、窮状を凌ぐにはインパクトが弱いことがわかり、断念しました。

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そこで、宿泊予約券ではなく「支援」に特化すれば、既存のクラウドファンディングサービスを使って、スピード感を持って山小屋支援を実施できるのではないかと考えました。

もちろん、既存のクラウドファンディングサービスを利用すると手数料がかかってしまいます。ただ、決済手段が豊富なこと、応援やシェアがしやすいこと、セキュリティの安全性が高いことなどを総合的に判断し、採用するにいたりました。もし自分たちでシステム開発をしていたらこんなに早くリリースすることはできなかったでしょうし、支援の額も限定的になっていたと思います。


リターンの設計について

今回のクラウドファンディングは「支援」に重きをおいています。そのため、意図的に支援者へのリターンを少なくしています。

実は、当初はステッカーや手ぬぐいなどのグッズによるリターンも考えていました。ただ、モノをつくるということは支援金の中から制作費や発送料を捻出しなければならず、一部とはいえ、支援金を無駄に使ってしまうことになるのではないか。それであれば、グッズ制作はせず、その分を支援金に回す方がよいのではないか。また、コロナ対応に追われている山小屋の方々へ、グッズの梱包・発送作業をお願いするのは申し訳ない... などの理由から、潔く「支援」に特化する設計にしました。

リターンは少ないですが、その分、最大限の額(*)を山小屋の方々にお届けできます。支援に特化しております趣旨をご理解いただけると幸いです。

*クラウドファンディング会社への手数料、送金する際の振込手数料を除いた全額を山小屋の方々へお渡しします。プロジェクト運営側では一切の費用をいただきません。

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支援金の配分について

山小屋支援プロジェクトでは、支援の方法として「応援する山小屋を指定するコース」と「指定しないコース」があります。「指定しないコース」で集まった支援金はどう配分されるのかについてご案内します。

まず、「山小屋」といっても運営主体はさまざまです。

大まかですが、下記のように山小屋を分類し、支援を最も必要とする山小屋を図式化しました。

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「交通の便が悪い山小屋」とは、車や歩荷など陸上での物資方法がなく、ヘリでの物資輸送に頼らざるを得ない山小屋を指します。

「安全の要の山小屋」というのは、山小屋の中でも宿泊・休憩・遭難救助施設として、とりわけ重要な山小屋を指します。イメージとしては、「この山小屋がなくなってしまうと縦走登山ができなくなる」「山の難易度が格段に上がり、遭難のリスクが高まってしまう」などの山小屋を想定しています。

上記を踏まえ、できる限り優先度の高い山小屋へ重点的に配分したいと考えています。ただ、山小屋によっていろんな考えや立場があるので、重点的な配分が難しい場合は、参加している山小屋のみなさんで等分することも視野に入れています。

いずれにしろ、透明性の高い取り組みにしたいので、どのような判断軸で配分し、いくら配分したかについて、後日(*)公開いたします。

*2020年8月末予定


ヤマケイさんの「山小屋エイド基金」について

ヤマケイさんが同じようなクラウドファンディングを立ち上げているのですが、 一緒にはできなかったのですか?

というご質問をよくいただくので、お答えします。

5月18日(月)に、私たちが「山小屋支援プロジェクト」を開始すると、数時間後にヤマケイさんの「山小屋エイド基金」が開始されました。

このように偶然にもタイミングが重なってしまったことはとても驚きで、もし事前に知ることができていれば、お互いにリリース時期をずらしたり、クラウドファンディングを共同で行うなどの取り組みもできたと思います。

とはいえ、山小屋支援が必要な状況に変わりはありません。多くの支援の形が立ち上がることは、登山業界にとってポジティブで喜ばしいことだと考えています。「山小屋エイド基金」にもぜひご協力いただけますと幸いです。


最後に

私たちやヤマケイさんだけでなく、山小屋支援の取り組みが方々で活発になればと思います。ECを活用して山小屋のオリジナルグッズを販売する方法もあるでしょうし、各山小屋が独自のクラウドファンディングを立ち上げたり、山小屋によっては国や行政の支援を得る方法もあると思います。

業界が協力しながらコロナ禍を乗り越えたい。山小屋を含め山岳環境を持続可能な仕組みにアップデートし、次世代へ繋いでいきたい。心からそう願っています。


2020年5月21日 
株式会社ヤマップ 代表取締役  
春山慶彦


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