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YAMAP2019年振り返り企画 - 登山アプリYAMAP編

YAMAP でプロダクトマネージャーをしている中島と申します。

実はYAMAPでは、新機能をリリースする際、可能な限りお知らせを YAMAP Info (お知らせブログ)に掲載してきました。その記事の内容を参照しつつ、この記事では 2019 年のプロダクト改善を振り返ってみたいと思います。

▼ 会社としての振り返りはこちら▼


1 月 〜 3 月

この期間、 YAMAP アプリでは大きな新機能を提供することはできませんでしたが、裏側では今後の開発効率を改善するための土台作りを行っていました。

1. アプリ API 移行

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YAMAP はアプリだけで動いているのではありません。アプリの裏側にはサーバーサイドのシステムがあり、 iPhone / Android アプリとサーバーが通信を行って地図をアプリ内に保存したり、アプリ内でとった活動記録をサーバーサイドに保存したりしています。この裏側のシステムのことをバックエンド API と言います。

2019 年の冒頭、 YAMAP 創業時から開発してきたバックエンド API を新規に作り直した API に移行する作業を行いました。アプリチームのエンジニアに頑張ってもらい、短期間で新 API に移行を完了することができました。

2. 地図印刷機能

地図印刷

アプリで大きな新規開発を行えなかった傍ら、ウェブサイトの方で新しい機能「地図印刷機能」をリリースしました。

それまで、YAMAPの地図を使う場合は、アプリで地図をダウンロードするか、地図の画像ファイルをパソコンにダウンロードする必要がありました。したがって、山行時にYAMAPの地図を印刷して山に持って行くには、画像ファイルを必要な範囲で切り取らなければなりませんでした。

YAMAPのユーザーさんは、ご高齢の方も多く、画像編集ソフトをお持ちでないこともあり、サポートスタッフが手作業で地図を拡大・切り取りの上、画像ファイルをお渡しすることもしばしば。しかし、ユーザー数の増加に伴いお問い合わせ件数が増えていることもあり、全ての地図切り取りのご要望にお答えすることが難しくなってきました。そのためブラウザー上で地図の任意の範囲を選択し、ユーザーさん自身で切り取り印刷ができる機能を開発することになりました。

この印刷機能には副産物もあり、 YAMAP の全ての地図(約 4000枚 )をブラウザー上で拡大・縮小しながら閲覧することが可能になりました。それまでコースタイムを確認するには、アプリでダウンロードした地図を開くか、パソコンに画像ファイルをダウンロードして閲覧する必要がありましたが、ブラウザーだけで手軽に地図を閲覧できるようになり、山行計画も立てやすくなったと思います。是非ご利用下さい。

3. アプリホーム画面の刷新と注目の活動日記

ホーム画面の刷新と注目の活動日記

アプリのホーム画面を刷新し、「注目の活動日記」や「読みもの」など多様なコンテンツを表示するようになりました。YAMAP に投稿される活動日記が増え、ホーム画面に表示される活動日記に関しては何らかの交通整理が必要だろうという意見が交わされ、おすすめしたい活動日記をピックアップしてホーム画面に表示するようにしました。

従来通り、新着の活動日記を閲覧したいというご要望が多かったことから、現在は「注目の活動日記」に加え「新着の活動日記」も表示するようにしています。


4 月 〜 6 月

春の季節、一番大きな出来事はウェブサイトのリニューアルでした。ゴールデンウィークは一年で最もアクセスが伸び、システムに負荷がかかる時期ですが、新システムは大きなトラブルもなく乗り越えることができ、とりあえずはほっとしました。

1. yamap.com 移行

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バックエンド API 同様、 YAMAP 創業当初より利用していたウェブサイトのシステムを全面的にリニューアルしまし、ウェブサイトのドメインも yamap.co.jp から yamap.com へ変更となりました。

この移行により、一部ご不便をおかけした点もあるかとは思いますが、ウェブサイトの機能追加や改修の効率が改善されました。 yamap.co.jp 時代にはスマートフォン用とパソコン用で二重にページを用意していたのが一つのページで両対応できるようになり、開発効率が大幅に改善されました。

見た目をモダンなデザインに改修したほか、ページ間の遷移速度も大きく改善されて使い勝手が向上しています。とりわけ便利になったのが活動日記編集時の写真アップロード機能です。yamap.co.jp 時代には一度にアップロードできる写真の枚数に上限がありましたが、写真をドラッグ&ドロップで手軽にアップロードできるようになり、簡単に写真をアップロードできるようになりました。

2. バッジ機能

富嶽三十六景

YAMAPで活動日記を保存するとバッジを獲得できる機能をリリースしました。第一弾は富士急行さんと共同の取り組みで、山頂から富士山を望むことができる山に登頂すると獲得することができる「富嶽三十六景バッジ」です。アプリ内で獲得したバッジを所定の場所で見せると、リアルのピンバッジをもらうことができます。

3. 活動日記一覧でいいね!を非表示に、その後再表示

YAMAP の利用状況を詳しく分析した結果、いいね!が我々が想定した通りに使われていないことが確認されました。この状況を是正すべくいくつか改善を行いましたが、その中で一番大きかったのが活動日記一覧でいいね!数を非表示にするというものでした。このような対応は最近 Instagram でも行われています。

ただリリース後のユーザーの皆さんからのフィードバックは元に戻して欲しいというものがほとんどでした。加えて、利用状況を改めて調べた結果、いいね!を表示していた時期と非表示にしてからで皆さんの利用状況に大きな変化はないということが確認できました。

今後も様々な数値を確認しながら、より多くの皆さんに満足して頂けるサービスとなるよう謙虚に改善を続けていきます。


7 月 〜 9 月

この季節はみまもり機能をはじめ、夏山シーズンに向けて安全安心に関わる機能を中心にリリースしました。

1. みまもり機能

みまもり

リリース時に多くの反響を頂いたみまもり機能をリリースしました。詳しくはリリース時の note の記事をご覧下さい。

この機能の素晴らしいところは何と言っても、 YAMAP を使って山に登る人が増えれば増えるほど、より多くの位置情報が交換され、登山の安全性が高まるということです。位置情報を送った人、受け取った人、登山に行っている人の帰りを待つ家族や友人、山岳救助に従事される各地の自治体や警察、YAMAP を利用して下さる方が増えることで、登山に関わる人たち全体を幸せにできたら何より素晴らしいことです。

使い方などは以下の YAMAP Info 記事に掲載していますのでご覧下さい。

2. 日本百名山バッジ、山の日バッジ

日本百名山バッジやおすすめの山バッジ、山の日バッジなど、バッジの種類を増やしました。

この時期にリリースしたバッジは「富嶽三十六景バッジ」と異なり、活動日記の公開が前提となっています。自分が行きたい山の先人の活動日記は、山行を計画するとき非常に参考になります。ただそれは活動日記が公開されていることが前提。非公開では折角の記録や軌跡が誰かの目に触れることはありません。

YAMAP としては、ユーザーさんに活動日記をできるだけ公開して欲しいと思っていますが、ただお願いするだけではなく、活動日記を公開してもらうことでバッジをプレゼントできたら素敵ではないか、という発想で企画されたのがこれらのバッジです。山に行った人、これから山に行こうとしていて情報収集している人、両者を結び付ける YAMAP 、それぞれが Win-Win-Win の関係になれるよう、良い仕組み作りをしていきたいと思っています。

3. 関連活動日記(類似する活動日記)

小さな改善ですが、活動日記の下部にその山行と近い時期に類似するルートを辿った活動日記を表示するようにしました。一つ活動日記を読んで、同じ時期にこの山に登った人はどんな活動日記を書いているのだろうと思うことはあると思います。複数の活動日記を比べて読むことで、登山道の状況や山の景色などを多角的に確認することができるようになります。この機能はいまのところウェブサイトのみの機能ですが、便利な機能ですので是非ご活用下さい。

4. 登山計画のリニューアル

登山計画

2019 年は何度か登山計画をリニューアルしましたが、 9 月のリニューアルがもっとも大きな変更でした。これまでの登山計画と少しコンセプトを変えて、登山計画提出時に家族へ登山計画の内容を共有するというものです。遭難時の捜索活を迅速に行うためには、登山口のポストに登山届を投函することに加え、身近な人に計画を共有しておくことが重要です。山から帰って来ていないことに気づき、警察や自治体へ捜索を依頼してくれるのは家族など身近な人だからです。登山届の提出が義務づけられていない低山であればなおのことです。

このリニューアルでは何人かのユーザーさんにオフィスにお越し頂き、丹念にユーザーテストを行いながら開発を行いました。手前味噌ではありますが、以前のバージョンに比べかなり使いやすくなっていると思います。ご協力頂き、どうもありがとうございました。


10 月 〜 12 月

秋から年末にかけて、一年を通して行っていたプロジェクトが実を結び、多くの機能がリリースされました。

1. 地図上の特定の地点を通った活動日記を検索する機能

ランドマーク検索 1

YAMAP で「富士山」と検索したときに、実際に富士山に登った活動日記だけでなく、近郊の山に登っていて本文に「あそこに富士山が見えます」と本文に書いている活動日記もヒットしてしまい、実際に富士山を訪れた日記だけに絞り込んで検索したいときに不便でした。この問題を解決する方法はいくつか考えられますが、その中の一つとして、地図上から任意の地点を選択して、実際にその場所を訪れた活動日記を検索する機能をリリースしました。

同じタイミングで、地図上の任意の地点(ポイント)をクリックすると、その場所で最近撮られた写真を閲覧できるようにしました。「いまあの山の景色はどんな感じだろう?」というときとても便利です。紅葉や積雪の様子を調べたいときにご利用下さい。

2. 山の情報ページリリース

山情報

これまでアプリからだけ利用可能だった「山の情報」をウェブサイトでも利用できるようにしました。ウェブサイト版ではアプリ版に加え年間登山者数分布や年間の気温の推移が追加されているほか、モデルコースを独立したページとして用意し、登山口へのアクセス情報や周辺の情報を充実させています。

そもそもなぜ山の情報を YAMAP で提供しているのか。YAMAP はこれまで地図ベースで山の情報を収録してきました。しかし、槍ヶ岳・穂高岳・上高地の地図のページを見て頂ければわかるように、地理的に近接した山が一つの地図に収録されている一方、北アルプスの山の情報を一つのページに集約することは困難で、情報量としても不足しています。これでは登山前の情報収集をする際に 、YAMAP 以外のウェブサイトや書籍を使って山の情報を収集する必要があり、非常に不便です。登山口へのアクセス情報を含むすべての情報を YAMAP に集約し、ワンストップで登山前の情報収集を行えるようにすることが我々が実現したいことです。そのためには地図単位から山単位へと、情報の粒度を細かくする必要がありました。山に登るためのハードルを下げることが YAMAP の目的であり、その入口が山の情報というわけです。

まだまだ山の情報が不十分ですが、 YAMAP でよく登られている山を中心に今後も情報を増やしていきたいと思っています。

3. Android Wear 版 YAMAP アプリの改善

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YAMAP では CASIO さんと提携し、 PRO TREK Smart シリーズ向けに Android Wear 版の YAMAP を提供しています。スマートフォンの YAMAP アプリで利用する地図のコースデータはメタデータ化されていますが、 Android Wear 版では古い時代の仕組みを使い続けており、コースのデータが画像として表示されていました。これでは地図のメンテナンスコストがかかり、ユーザーさんにも最新の地図を提供するのに時間がかかってしまいます。

今回、地図の仕組みをスマートフォンアプリ版と統合したことで使い勝手が向上し、ユーザーの皆さんにも常に最新のコース情報をお届けできるようになりました。詳しくはリリース時の YAMAP Info の記事をご覧下さい。

4. サポートシステムの刷新

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こちらは特にお知らせ等は掲載しませんでしたが、この秋からお問い合わせ返信の仕組みを少し変更し、 Zendesk という外部ツールを使ってより効率的にお問い合わせ返信が行えるようにしました。

YAMAP ではお問い合わせの経路が複数あり、ユーザー数の増加に伴うお問い合わせ増で、お問い合わせ返信の負荷が非常に高くなっていました。サポートスタッフの人員増を行うだけでは問題解決とならず、全ての問い合わせ経路からの返信を一括して管理できる仕組みの導入が必要でした。

まだまだ機能的に不足している部分はあるのですが、サポートスタッフの負荷が軽減され、より一層 YAMAP が成長してユーザー数が増えても耐えられるような仕組みを構築していくこともプロダクトとして大事なことだと認識しています。

5. アプリ内検索の改善

地図検索絞り込み

「地図上の特定の地点を通った活動日記を検索する機能」の項目でも触れましたが、 YAMAP では活動日記の検索に課題がありました。今回、活動日記の絞り込み検索を改善し、都道府県や地図で活動日記を絞り込めるようにしました。これまで全文検索を行っていたため、例えば沖縄の山に登った活動日記で北海道の「トムラウシ山」に言及していた場合、「トムラウシ山」と検索したときに沖縄の山の日記がヒットするような状況になっていました。この状況を改善すべく、都道府県や山行時に使われた地図で活動日記を絞り込めるようにしました。今後は実際に登頂した山の名前でも絞り込み検索を行えるようにしていく予定です。実装までいましばらくお待ちください。

6. YAMAP LABO スタート

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YAMAP LABO がスタートしました。第一弾は、任意の複数の地点を選択し、その場所を通った活動日記を検索する機能です。

この機能の何が便利かというと、縦走している活動日記の検索が非常に簡単に点です。もう何度も述べていますが、旧来の YAMAP の活動日記検索は文字列による検索が基本で、特定の地点を通ったことを条件に検索結果を絞り込むことができませんでした。縦走した日記を探したければ「雷山 井原山 縦走」のようなキーワードで検索する必要がありました。縦走した活動日記が全て「縦走」というキーワードを本文に含んでいるとは限らず、目的の活動日記を探すのは至難の業でした。しかもこの機能は活動時期で絞り込む機能も付いています。同じ登山道でも夏と冬ではコースや装備が違ったりします。自分が行きたい季節に、自分が行きたいコースで登っている活動日記を検索して事前の情報収集をしておくことで、初めての山も安全に登ることができます。便利ですので是非ご活用下さい。

LABO のリリースに関して詳しくは以下をご覧下さい。

7. YAMAP プレミアムスタート

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制度や開始時期の変更などでご迷惑をおかけしましたが、何とか YAMAP プレミアムを開始することができました。これから持続可能なビジネスモデルを確立し、 21 世紀の山のインフラとなるべく努力して参ります。

8. 3D マップ機能のリリース

YAMAP プレミアム会員向けの機能第一弾として 3D マップ機能をリリースしました。この機能は山行時の軌跡データを 3D マップ上で見ることができる機能です。ズームしたり視点を移動したりして、楽しみながら活動記録を振り返ることができます。

3D マップについて詳しくは以下をご覧下さい。

9. 国土地理院標高タイルによる標高補正

標高タイル

YAMAP では長らく、活動日記の標高データに関してはアプリから送信されてくる GPS のデータを利用していました。しかし GPS で取得した標高データには端末ごとにバラツキがあり、一部の機種で記録した活動日記では標高グラフが上下に乱れ、獲得標高などのデータがおかしな値になることが度々ありました。この問題を解決すべく、国土地理院が提供する標高タイルデータを用いて、緯度経度から軌跡データの標高値を補正するようにしました。これにより、端末の GPS チップの精度によって標高値にバラツキが出る問題が解決し、同じコースを歩いた活動日記ではほぼほぼ同じ形状の標高グラフが表示されるようになりました。小さくはありますが地道な改善を今後も続けて参ります。

10. 2019年登り納め・2020年登り初めバッジ

登り納め・登り初めバッジ

2019 年最後の大きなリリースは「2019年登り納めバッジ」と「2020年登り初めバッジ」でした。これは山の日バッジに似た仕組みで、どの山でも良いので対象の期間内に YAMAP で活動記録をとって山に登り、下山後に活動日記を公開することで特別なバッジが付与されます。是非年末年始に登山に行ってバッジを獲得して下さい。

* * *

以上、 2019 年にリリースした内容をふりかえりました。システムのリニューアルやサポート体制の強化のほか、安全・安心に関わる機能、登山を楽しくする機能、登山前の情報収集を便利にする機能など、たくさんの機能をリリースしました。 2019 年にリリースした機能改善を土台に、 2020 年ももっと登山を楽しく安全にするプロダクトを届けていきたいと思います。

それでは、よいお年をお迎えください。