YAMAPが企画協力をしているトレイルラン漫画「カゼキル」の第1巻が発売されたので語らせてください
こんにちは、YAMAPのPR兼トレイルランチームの﨑村昂立です。
少しだけ前の話ですが、YAMAPが企画協力をするトレイルラン漫画「カゼキル」の第1巻が2019年10月25日に発売されました。
今回は、この漫画のことを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思い、独断と偏見で漫画の魅力を書かせていただきます。
なんでYAMAPが企画協力を?
よく聞かれることなので、改めて。
この理由を語るには、YAMAPの企業理念に遡る必要があります。
YAMAPの企業理念は「あたらしい山をつくろう。」という言葉。
だいぶ変わってきてはいるものの、登山をしない人にとって山はまだハードルが高いものです。だからこそ「山ってかっこいい」「山って楽しそう」というような空気をつくって、都会と自然の距離を近づけていきたい。
そういう思いが、この言葉には詰まっています。
山に入る方は感じているかと思いますが、山を走る人は間違いなく増えています。その中でトレイルランには「狭義の登山」にはない新しい空気を感じるのです。
この空気は、山に親しみがない人にとってポジティブに映るポテンシャルがあるんじゃないだろうか。YAMAPの中でも増えていくトレイルランの活動日記を眺めながら、その思いはますます膨らみます。
そもそも、トレイルランの背後にはランニング市場が広っています。トレイルランを山の入り口にする人が増える可能性が十分にある。YAMAPにとって、トレイルランは魅力的な市場とも言えるのです。
とはいえ、トレイルランが消費的なブームのように終わってしまっては元も子もありません。そこで、YAMAPでは「トレイルランを安全で持続可能なものにする」ための取り組みをスタートしました。
その中で、トレイルランの魅力や自然の素晴らしさはもちろん、山の危険やマナーまでを世に伝えるにはどうすればいいかを考えました。その中で、たくさんの人が親しむ「漫画」というメディアに可能性を感じたのです。その後、ご縁もあってKADOKAWAさんとお話を始めたことが、この漫画の直接のきっかけです。
結果的に、アウトドア漫画を描きたいという想いが強かった本橋ユウコ先生(その前はクライミング漫画を描いていました)にお願いをすることとなり、YAMAPとKADOKAWA編集部も一丸となったカゼキルチームが結成されたのです。
さて、ここからカゼキルについて語らせていただきます。
(ちなみに、本橋ユウコ先生がカゼキルに至るまでの物語はこちらで詳しくインタビューしています。ぜひ読んでみてください)
カゼキルのあらすじ
北鎌倉に住む少年、扇谷颯太。彼は走ることにトラウマを抱えていた。
子どものころに沿道で見かけた駅伝選手に憧れて始めた陸上。中学最後の大会でアンカーを任された颯太は、責任の重圧と焦りから転倒をしてしまい、チームは棄権することになってしまう。
タスキを最後まで繋げなかった。みんなの努力をオレが台無しにした。
この一件がトラウマとなり、怪我が治ったにも関わらず走ろうとすると、颯太の膝は痛むようになる。
高校では陸上を辞めるつもりだった颯太だが、あるきっかけから彼は走る喜びを取り戻すことに。
それが、プロトレイルランナーである守山啓介との出会いだった。
守山は颯太に言う。
どんな状況でもあきらめずに走り続ければ
自分の力で挽回できるのがトレランなんだ
だからこそゴールした時
自分の前に「新しい景色」が開ける気がするんだよ
颯太は守山の言葉に導かれるまま、山を走り始める。
そして、出会うことになるライバルや仲間。壮大で素晴らしくも過酷なトレイルやレースの数々。
自然、仲間、そして自分自身と向き合いながら走り続けたその先に、彼らは何を見つけることになるのか。
トレイルラン青春譚の幕が、ここに開く。
トレイルランを中心に描かれる、それぞれの葛藤や願い
カゼキルには、スポーツ少年漫画の例に漏れず、様々なキャラクターが登場します。
走ることがトラウマになった颯太。勝負に対して後ろめたさを持つ一馬。才能に嫉妬を覚える剛。ひょうきんさの裏に何かを抱える虎太郎。トレイルランという競技を広げたい守山。
自然の中を走るということが、彼らの悩みを救い、望みを叶えていくことになりそうです。
山登りはよく人生や経営に例えられますが、トレイルランも広義な意味では登山。むしろ距離が長い分、挽回できるチャンスも多いアクティビティです。「挽回できる」というフレーズは、漫画に出てくる守山の言葉ですが、実際のトレイルランナーもよく口にする表現ですね。
以前、本橋先生にインタビューをしたとき、「読者にどう感じてもらいたい?」という問いに対してこんなこと言葉が返ってきました。
自分の中に心から願っていることがあれば、諦めさえしなければ、人生を変えることはいつだってできるよ
記事にある通り、本橋先生の人生も紆余曲折。そういった自身の経験も、この漫画には色濃く反映されているのでしょう。
トレイルランをチーム制にすることで生まれる面白み
トレイルランのレースは通常1人で走ることが多く、チームを組む場合も一緒に走るのが一般的です。一方、カゼキルでは、富士山の周辺を走る100mile(160km)レース「UTMF」のコースを駅伝方式で走るという、架空の大会が主人公たちの目標になっています。
主人公チームである神奈川県選抜は、バックグラウンドが様々。陸上で長距離をやっていた颯太をはじめ、スキー、サッカー、オリエンテーリング、山岳部、中にはアイドルをやっているキャラクターまでいます。(実際トレイルランの強豪選手には、登山や陸上だけでなく他のスポーツから転向をしてきた選手も多い)
バックグランドが様々であるということは、それぞれの得意分野があるということ。登りの強さ、下りのスピード、持久力以外にも、補給計画、ステップワーク、ルートファインディング、トラブル時の対応など、各キャラクターの強みが光るシーンが予想されますね。
こういったキャラの強みと走行区間の組み合わせなども、この作品の見どころになりそうです。
絶賛進化中。作中に出てくるギアはなるべく忠実に
連載当初は、ギアの書き込みなどに甘いところがあり、Webなどでは厳しい声も上がっていましたが、回を重ねるごとにギアの描写が精緻になってきていることにお気づきでしょうか。
また、キャラクターたちが身につけているギアの多くは、現実の商品を描いています。各キャラクターのイメージや出身スポーツに応じて、当て込まれているのも面白いところです。
キャラクター特注モデルの実現なども将来的にはありえるかもしれません。
おわりに
カゼキルの物語はまだ始まったばかり。これからの展開が楽しみである一方、本橋さんはインタビューの中でこうも語っていました。
「カゼキル」では、選手たちだけではなくて、トレイルランニングを取り巻く人たちの話もきちんと描きたいと思っています。若い人がアウトドアをしたい!と思ってもらえうよう、自然の中で過ごす素晴らしさについても丁寧に触れたいですね。
ランニングをきっかけにトレイルランに興味を持っている方も、登山をしていてトレイルランを始めたいと思っている方も、何か新しいことを始めたいと思っている方も、この漫画を通してきっとトレイルランや自然の魅力を知ることができるはず。
「カゼキル GREAT TRAIL RUNNERS」は、大型の書店をはじめ、Amazonなどで購入が可能です。電子版もありますので、ぜひ試し読みから始めてみてください。
追記
上田瑠偉選手がスカイランニングの年間世界王者になったことで、ますます盛り上がりを見せるトレイルラン。YAMAPもこの波をより大きくする一端を担えられたらと思います。
10月26日に高尾で開催したこちらのイベントレポートも後日公開するので、ぜひお楽しみにください。